新型コロナウイルス感染症の影響がまだまだ続く中、2021年10月より全国で順次「最低賃金」が引き上げられます。
最低賃金の上げ幅は大きく、時給ベースで30円前後引上げとなりました。
このタイミングでの最低賃金の引き上げは、会社にとって大きな負担になりますよね。
今回は最低賃金の引き上げ負担を軽減するために使える「業務改善助成金」をご紹介します。
補助金・助成金を活用して人件費の上昇をカバーしながら業務の効率化も図れる助成金です。
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
業務改善助成金とは?
業務改善助成金とは、厚生労働省(国)が中小企業・小規模事業者向けに「労働生産性の向上」と「賃金引上げ」を図るために設けた助成金です。
「労働生産性をあげたい」「最低賃金を底上げする」この2つの要件を満たす小規模な会社向けの助成金です。
✔ 労働生産性をあげたい会社
(設備投資、コンサルなど)
(例)今まで人力でやっていた作業を機械などの設備を入れる
(例)飲食店に専門のコンサルタントを入れて経営改善を図る
+
✔ 会社の最低賃金を底上げ
↓
「業務改善助成金」の対象
どんな会社に向いている助成金?
業界でも「低賃金」の中小零細企業(100名以下)が対象となります。
助成金を活用して業務を改善することで売り上げが上がるだろう、伸びしろのある会社にぴったりの助成金です。
たとえば、まだまだ機械化や業務システム化が進んでおらず、
食品のパック詰めを手作業で行っている会社
食べ物のオーダーを紙の伝票を持って取りに行く飲食店
人材教育まで手のまわらない会社
などです。後ほど、具体例をあげます。
業務改善助成金の対象は?
もともと「低賃金」で従業員を雇用していた会社が、賃金を上げる場合に対象となります。
「低賃金」の定義は、
地域で定められている最低賃金と、会社内の最低賃金額が30円以内
A 会社内の最低賃金 1060円
B 都道府県ごとの最低賃金 1041円(東京都)
1060円 ー 1041円 = 19円
AとBの差額が30円以下につき
業務改善助成金対象!
会社内の最低賃金で働く方の1時間あたりの賃金が「地域最低賃金+30円以下」であれば、この条件はクリアです。
業務改善助成金の助成金額と助成率は?
業務改善助成金の助成金額と助成率は、条件によって細かく分かれています。
業務改善助成金の助成金額
助成金額 20万円~600万円
助成金額は最低賃金の上げ幅と人数によって異なります。
例えば、
「1人だけ時給25円UPする」という会社は、25万円の補助金の枠に当てはまり、
「10人の従業員を90円ずつUPする」という会社は、600万円の枠に当てはまります。
※時給UPした結果、時給が追い抜かれる人がいる場合は確認が必要です
その場合、いくらUPするのか?何人UPするのか?など、低い数字に合わせてカウントするので、都道府県労働局雇用環境・均等部や社会保険労務士の先生に確認しましょう!
業務改善助成金の助成率
助成率 投資費用の75%~90%(※)
助成率は、25円コースから90円コースの各申請コースごとに定める引上げ額以上に、事業場内最低賃金を引き上げた場合、労働生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率をかけて計算します。
各申請コースごとに、助成の上限額が定められていますので、ご注意ください。
申請から助成金受け取りまでの流れ
助成金の受け取りは、申請→決定→設備投資・賃上げ→助成金交付となります。
先に経費の支出があって、その後に助成金が交付されるという流れです。
【① 賃金引き上げと必要な投資を検討】
まず、最低賃金を上げた時の会社の負担や、労働生産性をあげるために必要な設備などの投資があるか検討します。
↓
【②助成金交付申請書を提出】
事業改善計画と賃金引上げ計画を記載した申請書を労働局に提出。
内容が認められれば助成金の「交付決定通知書」が届きます。
↓
【③設備・機器の導入などで生産性を向上】
はじめに検討した労働生産向上、仕事の能率化が図れる設備投資などを行い、業務の効率化を目指します。
↓
【④事業場内の最低賃金を引上げ】
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げます。
↓
【⑤事業実績報告書を提出】
業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した報告書を労働局に提出。書類の確認が行われ、内容が適正と認められれば助成金額の「確定通知書」が届きます。
↓
【⑥助成金の入金】
確定通知を受けたら、「支払請求書」を提出します。
その後、助成金が指定の銀行口座に振り込まれて完了です。
※助成金は予算の範囲内で交付するため申請期間内に募集を終了する場合がありますのでご注意ください。
業務改善助成金の活用事例7選
具体的に、どんなことに業務改善助成金を活用できるのか見てみましょう。
1.飲食店の例:テーブルオーダーシステム導入
【行った内容】
テーブルまで行き注文を取っていたが、「テーブルオーダーシステム」を導入したことで、お客さまに自分で注文を入力してもらえるようになり、オーダーと会計が正確になり、従業員の負担が減った。
2.清掃業の例:業務清掃機とコンサルティング導入
【行った内容】
手作業で清掃していたところに、「業務用給水清掃機」を導入したことで、床清掃担当の作業時間が3分の1に減った。
また「業務改善コンサルティング」を依頼した結果、ITの活用により、スケジュール調整や書類作成、取引先とのコミュニケーションが効率化した。
3.小売業の例:POSレジシステム
【行った内容】
レジに「POSレジシステム」を導入。今まで手作業で行っていた在庫管理がレジと連動して正確になり従業員の負担が減った。
「POSレジ」とは・・・お客さまと金銭のやりとりをした時点での販売情報を管理するシステム(POSシステム)
4.介護事業の例:リフト付き車両
【行った内容】
介護送迎時に今まで2人のスタッフで車いすの乗り降り補助を行っていたところ、「リフト付き特殊車両」の導入により従業員の負担が減り送迎時間も短縮された。
5.バックオフィスの例:業務システム
【行った内容】
事務員がエクセルや古い業務システムで管理していた各データを、新しい業務システム「顧客・在庫・帳簿管理システム」を導入したことにより、従業員や役員、顧問の税理士ともデータ連携でき業務が効率化した。
6.飲食店の例:コンサルタント
【行った内容】
専門の「コンサルティング」を依頼し、飲食店の業務フロー見直してもらった結果、従業員の作業のムダが省け業務の負担も軽減し、顧客回転率もあがった。
7.小売業の例:ECサイト
【行った内容】
電話と簡易的なWebサイトで受け付けていた注文を、「インターネット受注機能のホームページ(ECサイト)」導入。同時に在庫管理やお客様とのメッセージのやり取りもスムーズになり業務が効率化した。
これら以外にも、インクジェットプリンタや、受注管理システム、顧客管理システム、貨物自動車などにも利用されています。
また、8月1日から特例的に条件が緩和されて、
コロナ禍の影響を受けながらも30円以上の賃金引上げを行う場合には、
生産性を向上させるための自動車やパソコンスマホ、タブレット等の端末及び周辺機器(新規導入)等も補助対象になります。
あらゆる業種で使え、コンサルティングから場合によってはパソコン・タブレット、車両まで使える助成金はまれです。
他にも、厚生労働省のページで「活用事例」がのっていますので、参考にしてください。
まとめ
時給を上げたことで、年間の賃金経費がかさみ過ぎて、助成金額を上回り、その分の労働生産性を上げられなかったとなってしまっては、本末転倒となります。
本当に業務の効率化を図れるであろうものを導入し、必要に応じた賃金UPと助成金申請のバランスをよくよく検討し、「業務改善助成金」を活用いたしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「最低賃金引上げ」による人件費の上昇をカバーしながら業務の効率化も図りましょう!
使えるかどうかわからないという方は、まずはお気軽にご相談ください!