日本は少子高齢化が進行しています。
若い世代の労働者数が減少し、65歳以上の労働力人口が年々増加し続けています。
2014〜2021年の労働者人口推移では、「25〜44歳」の労働者人口が毎年減少し、「65歳以上」の労働者人口は毎年増加し続けているという結果が出ています。
今後も働き続ける高齢者が増えることを想定すると、
身体機能が低下し怪我や病気のリスクが向上する世代も安心して勤務できる職場環境を整えることが、重要になってきます。
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
60歳以上の労働者で増える労災事故
参考:厚生労働省のリーフレット
厚生労働省によると、60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍に増えました。
特に商業や保健衛生業をはじめとする第三次産業で増加しています。
一方、労災による死傷者数では60歳以上の労働者が占める割合は2018年時点で26%と増加傾向にあります。
労災発生率は、高年齢層は若者よりも転倒災害、墜落・転落災害の発生率が高く、女性で顕著です。
高齢の労働者が増えるなか、労災を減らすために2020年度にエイジフレンドリー補助金が作られました。
エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリー補助金とは・・・⾼齢者が安⼼して安全に働くことを目的とし、中小企業事業者が職場環境の改善に要した費用の一部を補助する補助金制度です。
これは、働く高齢者(60歳以上)が過去10年で1.5倍と増加し、さらに労働災害のうち1/4以上を占めるという現状を改善すべく策定されたものです。
労働災害が続けば、人手不足を招くおそれもあります。
ぜひエイジフレンドリー補助金を活用し、安全な職場をつくっていきましょう。
対象労働者
補助金の支給対象となるのは、次の①~③のすべてを満たす事業者です。
① 高年齢労働者(60歳以上)を、常時1名以上雇用している
②下表のいずれかに該当する事業者である(労働者数または資本金等のどちらかを満たせば該当)
業種 | 業種の詳細 | 常時使用する労働者数 | 資本金または出資の総額 |
---|---|---|---|
小売業 | 小売業、飲食店、持ち帰り配達飲食サービス業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 医療・福祉、宿泊業、娯楽業、教育・学習支援業、情報サービス業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業など | 100人以下 | 5,000万円以下 |
卸売業 | 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
その他の業種 | 製造業、建設業、運輸業、農業、林業、漁業、金融業、保険業など | 300人以下 | 3億円以下 |
③労働保険に加入している
補助金額と補助率
補助金額と補助率は下記のとおりです。
補助金額 | 最大100万円(消費税含む) |
---|---|
補助率 | 1/2 |
補助対象となる経費
補助対象となるのは、⾼年齢労働者のための職場環境改善に要した経費です。
また職場環境改善には、次のような対策が該当します。
- 働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防
- ⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊
- 健康や体⼒状況等の把握
- 安全衛⽣教育の実施
補助対象事例
次に、補助対象事例について紹介していきます。
この季節には重要な熱中症予防対策にも補助金が出ます!
まずは熱中症予防対策事例について解説いたします!
◆エアコンが対象になる例
熱中症のリスクの高い暑熱な作業場で作業を行う工場内に、休憩室を設けて、休憩室内にエアコンを設置する場合、補助対象になります。
◆対象外の例(熱中症予防対策)
・一般の「事務室」にエアコンを設置する場合
・事務所の屋根に遮熱性の高い塗料を塗布する場合
・工場全体の換気をするための、大型の換気装置 等
対象事例1:働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防
働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 介護における移乗介助の際の⾝体的負担を軽減する機器
- 介護における⼊浴介助の際の⾝体的負担を軽減する機器
- 熱中症の初期症状等の体調の急変を把握できる⼩型携帯機器 ( ウェアラブルデバイス ) による健康管理システムの利⽤
- ⾶沫感染を防⽌するための対策
また、「換気の不足を補うための空気清浄機」を導入するケースでは、以下の要件をすべて満たす場合のみ補助対象です。
- 空気清浄機が HEPA フィルタによるろ過式で、かつ、風量が5㎥/min 程度以上のもの
- 人の居場所から 10 ㎡(6畳)程度の範囲内に空気清浄機を設置すること
- 空気のよどみを発生させないように、外気を取り入れる風向きと空気清浄機の風向きを一致させること
対象事例2:⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊
⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 通路の段差の解消(スロープの設置等)、階段に⼿すりの設置
- 床や通路の滑り防⽌対策(防滑素材の採⽤、防滑靴の⽀給)
- 危険箇所への安全標識や警告灯等の設置
- 業務⽤の⾞両への⾃動ブレーキ⼜は踏み間違い防⽌装置の導⼊
- 熱中症リスクの⾼い作業がある事業場における休憩施設の整備、送⾵機の設置
- 体温を下げるための機能のある服
- 不⾃然な作業姿勢を改善するための作業台等の設置
- 重量物搬送機器・リフト
- トラック荷台等の昇降設備
- 重筋作業を補助するパワーアシストスーツ
上記トラック荷台等の昇降設備としては、昇降のためのリヤステップ、サイドステップ、手すりなどがありますが、これらは高年齢労働者の安全衛生確保に寄与するものと認められるため補助対象です。
テールゲートリフターやフォークリフトは対象外とされています。
対象事例3:健康や体⼒の状況の把握等
健康や体⼒の状況の把握等で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 安全で健康に働くための体⼒チェックの実施
- 運動・栄養・保健指導等の実施(健康診断、⻭科検診の費⽤を除く)
- 保健師やトレーナー等の指導による⾝体機能の維持向上活動
ただし体力チェックなどを実施する際、補助対象となるのは「雇用する高年齢労働者の人数分」のみです。
対象事例4:安全衛⽣教育
安全衛⽣教育で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- ⾼齢者の特性を踏まえた安全衛⽣教育
- 加齢による労働災害リスクの増大の理解促進のための教育
なお、高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策の「好事例」については、下記のページを参考にご覧ください。
補助金の対象外となる事例
下記のケースは対象外となるため、申請しても採択されません。
対象外① 建設現場等の休憩室
一定規模以上の建設工事では、現場事務所や休憩室などが工事費用にふくまれており、補助金の観点では常設の休憩室を前提としているため対象とはなりません。
対象外② 事務室には高齢者がいるが、改善を行うのは高齢者がいない工場内の場合
補助対象となる作業に高年齢労働者が従事しないため、補助対象外です。
対象外③ トラックに装備するテールゲートリフター・フォークリフト
トラックに装備するテールゲートリフター・フォークリフトは業務効率化・生産性向上のウエイトが高いため、対象とはなりません。
対象外④ 着替え用の予備
対象は高年齢労働者の人数分が限度。
たとえ対象となる「空調服」であっても、その「着替え用の予備」は対象外となり、自社で準備しなくてはなりません。
対象外⑤ 介護施設における電動ベッド
電動ベッドは「介助者の腰痛防止効果はある」としながら、主目的が「被介助者側の負担軽減、介護サービス向上のため」と考えられるため対象外です。
具体的には、
- 電動昇降機能
- 電動背起こし機能つきベッド
- 褥瘡防止ベッド
- マットやベッド付属の見守り装置
- 体重測定装置
などが対象外とされています。
対象外⑥ 交付決定前に発注・購入した物品や工事費用
「対策の実施・費用の支払い」は、「交付決定通知を受領」してから行わなくてはなりません。
交付決定前に発注・購入してしまった物品や工事の費用については、補助対象外となります。
最後に
若い世代の労働力が減少している日本では、企業が存続するために高齢者の力が不可欠です。
長く働き続けてもらうためには、高齢者が安心して勤務できる環境を整えることが欠かせません。
エイジフレンドリー補助金を活用することで高齢者が働きやすくなり、労働者の満足度向上につながることが考えられます。
この機会に、エイジフレンドリー補助金の利用を検討してみませんか?