近年、政府が進めてきた働き方改革のなかで、社員の労働時間に対する規制が強化されました。
これまでは、時間外労働の上限規制から中小企業等は除外されてましたが、
事業規模に関わらず全ての事業者に適用されることになりました。
そこで、今回は中小企業等が従業員の労働時間の適正管理に向けた環境整備に取り組む場合に助成金が交付される、厚労省の働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)・取り組みの具体例について紹介していきますので、参考にしてみてください!
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)とは?
生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備を行うことを目的として、労務管理用機器等の導入等を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。
対象事業主
中小企業主
成果目標
以下の成果目標を全て実施する必要があります。
- 新たに勤怠管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用すること。
- 新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること。
- 労働時間管理研修を労働者・労働管理担当者に実施。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」について研修を行う必要がある。
また、助成金が上乗せされる場合があります。
+3%または+5%以上の賃金引き上げを行なった場合
助成金額は下記で説明していきます!
助成金額
助成最大金額は340万円となります。
・成果目標達成時の上限額:100万円
・賃金引き上げの達成時の加算額
賃金額の引上げを成果目標に加えた場合の加算額は、指定した労働者の賃金引上げ数の合計に応じて、下記の表のとおり、上限額に加算する。
なお、引き上げ人数は30人を上限とします。
引上げ人数 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人 |
3%以上引上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円50万円 | 1人あたり5万円(上限150万円) |
5%以上引上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人あたり8万円(上限240万円) |
対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額を助成します(ただし上記上限額を超える場合は、上限額とします)。
一定以下の規模の事業者には優遇措置があります!
常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で⑥〜⑨を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合は補助率は4/5
支給対象となる取り組み
いずれか1つ以上実施してください。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
支給対象となる取り組みって?
支給対象となる取り組みの具体例について紹介していきます。
導入の参考にしてみてください!
参考:厚生労働省|石川県事例
POSシステム、釣銭機、給茶機などを導入
補助金を活用して、POSシステム・釣り銭機・給茶器などを導入した企業の取り組みを紹介します。
事業所名 | 株式会社陣笠(野々市市) |
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業種 | 外食産業 |
労働者数 | 26名 |
設備額 | 2,320,680円(※2年分合算) |
助成金額 | 2,280,000円(※2年分合算) |
課題
ホールスタッフの業務改善と労働能率の向上が課題
昨今の人手不足の中で、レジ要員の配置や団体客向けのお茶の給仕など、ホールスタッ
フの手を取られることが多い。
実施内容
業務の棚卸を行い、助成金を活用してPOSシステム・セルフレジ・給茶機の設備を導入することで労働能率の改善を実施。
→限られた人手で業務遂行が可能に。
→労働生産性が向上したことで、6名の労働者の時間給を各50円(最大増加率5.8%)引き上げ。
さらなる工夫
次年度は、より労働生産性の向上のために、タッチパネル端末による注文やコールシスムを導入。
また、急速の大型冷凍庫を導入し、調理時間の短縮に取り組みました。
→10名の労働者の時給を各50円引上げました。2年連続で5名の労働者の賃上げを実施しました。
タイムレコーダーと就業管理ソフトの連携事例
タイムレコーダーと就業管理ソフトの連携により、勤怠管理業務の負担軽減・給与事務の効率化に成功した事例を紹介していきます。
事業所名 | 株式会社ナウ(金沢市) |
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業種 | 繊維製品製造業(女性用補正下着) |
労働者数 | 29名 |
設備投資額 | 21万円 |
助成金額 | 15万円 |
課題
給与計算等の事務に時間が掛かっているため、デジタル化による効率化を検討
タイムカードの打刻を所属長が確認して人事課に送付。
人事課でも確認して給与ソフトへ手入力していた。
実施内容
助成金を活用して、ICカード型タイムレコーダーと就業管理ソフトを導入
これにより、
・各所属長の勤怠確認やタイムカード送付の時間と手間を削減できた
・締め日の翌日から給与事務に取り掛かることができた。
→休日の多い月でも焦らずに事務処理を行え、毎月約12時間要していた給与事務を約4時間に短縮できた。
・就業管理ソフトと給与計算ソフトの連携により手入力作業が不要に。
・手入力によるミスもなくなり、関係部署での生産性が向上。
さらなる工夫
人事課に転送された打刻情報を週1回チェックし、打刻漏れ等が無いかを定期的に確認することで、締め日後の給与事務をよりスムー ズに行うことができるようにした。
顔認証システムと労務管理ソフトの導入
顔認証システムと労務管理ソフトの導入により、労働時間の適正把握を行なった企業の取り組みについて紹介します。
事業所名 | 株式会社寺田鉄工建設 (小松市) |
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業種 | 総合建設業 |
労働者数 | 38名 |
設備投資額 | 約10万円 |
助成金額 | 約8万円 |
課題
打刻の印字不鮮明や打刻漏れが発生→労働時間を適切に把握できない
労働時間を集計する際には、タイムカードを使用しExcelに手入力し算出。
そのため、打刻の印字不鮮明や打刻漏れが発生し、労働時間を適切に把握できない状況にあり、対応策を検討していた。
実施内容
そこで、正確な勤怠管理や業務を効率化することを目的とし、助成金を活用することにしました。
- 個人別に該当週の隔週日別で労働時間を表示可能に。
- 週・月・年の通算労働時間、残業時間を可視化。
- 労働者からの意見・相談窓口担当者も表示されるように工夫。
- 顔認証システムを導入→本人以外が打刻不可に。
- 日本語が苦手な外国人労働者にも、アイコン表示で識別をし易く。
これにより、
・各自が毎日労働時間の推移やワークライフバランスの比率を目視可能に。
→時間外労働時間の削減について、意識が醸成させられるように。
・労務管理ソフトの導入により、集計ミスが無くなくなる。
→適正な労務管理が容易に。
・管理職も部下の勤務状況がウェブ上で随時把握可能に。
⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
デジタル式運行記録計(デジタコ)とは・・・速度、走行時間、走行距離(法定三要素)を記録する装置のことで、専用チャート紙にデータを記録するアナログ式運行記録計(アナタコ)に対して、SDカードやクラウド上に記録する方式の運行記録計をデジタル式運行記録計(デジタコ)と呼びます。
導入のメリット
導入するメリットとしては、下記が挙げられます。
- 運用しやすい
- 速度・走行時間・走行距離を簡単に記録できる
- データがキレイに見やすく表示されるため、専門的な知識が不要
- アナログ式運行記録計を利用した場合と比べて時間が大幅に短縮される
- 様々な機器との連携や管理できる情報が多い
運行日報を手動で作成する場合:
作成に1回あたり30分かかるとする→1か月で15時間→年間で180時間
従業員が10名いると年間1,800時間です。
報告のためのこの時間も労働時間となり、かなり時間を無駄にしていることが分かります。
デジタコを利用して運行日報を作成すれば、時間を効率的に使うことができるため、生産性を高めることができます!
デジタル式運行記録計(デジタコ)のデメリットは、導入に際して高額な初期費用が掛かることです。
平均して15万円ほどかかるケースが多いようですが、中には10万円を切る機種も出てきています!
導入時に頭を悩ませることになるこの初期費用ですが、条件を満たせば今回紹介した補助金を活用できます!
最後に
働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)と支給対象になる具体例について解説してきました。
補助金を活用して、労働環境を改善することができます!
この機会にぜひ補助金の活用を検討してみてください!
補助金の申請は、基本的には社労士の先生にお願いするのが良いとされます。
相談相手がいない場合は、ぜひ補助金のコンシェルジュにお問合せください!