日本の中小企業は約420万社あり、会社全体に占める割合も99%以上を占めています。
しかし、近年では後継者不足等により廃業に追い込まれること予想されており、
政府ではそのような状況を回避するために、中小企業の事業承継を補助するための事業承継・引継ぎ補助金を実施しています。
今回は、事業承継・引継ぎ補助金について解説していきます!
また、事業継承・引き継ぎ補助金を活用した事例も紹介していきますので、参考にしてみてください!
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金とは・・・
2021年度から事業承継補助金と経営資源引継ぎ補助金が一緒になりました。
その2つの補助金が合わさり、新たに創設される事業承継に関する補助金です。
従来の2017年にスタートした事業承継補助金と同様に中小企業の存続を補助することが目的としています。
補助対象者には、
- 事業承継・引継ぎを契機とする新たな取組(設備投資、販路開拓等)
- 廃業に係る費用
- 事業引継ぎ時の士業専門家の活用費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用等)の一部
が補助されます。
参考:中小企業庁HP
補助金の種類
経営革新と専門家活用の2種類の補助金から構成されています。
①経営革新
事業承継・引継ぎを契機とする新たな取組や廃業に係る費用の補助です。
この補助は、さらに「創業支援型」「経営者交代型」「M&A型」に分類されます。
②専門家活用
事業引継ぎ時の士業専門家の活用費用の補助です。
この補助には「専門家活用型」のみが規定されています。
経営革新
経営革新は、従来の事業承継補助金に相当する補助金制度です。
3つに分類されています。それぞれ解説していきます!
※ 上乗せ額は、廃業が伴う場合に発生します。
① 創業支援型 創業支援型
補助率 | 2/3 |
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補助上限額 | 400万円 |
上乗せ額 | 200万円 |
他の事業者が保有している経営資源を引き継いで創業した事業者を支援するための助成金です。
従来の事業承継補助金には規定されておらず、事業承継・引継ぎ補助金で今回新たに加えられた補助制度となります。
② 経営者交代型 経営者交代型
補助率 | 2/3 |
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補助上限額 | 400万円 |
上乗せ額 | 200万円 |
親族内承継等により経営資源を引き継いだ事業者を支援するための補助金です。
※事業承継補助金では「後継者承継支援型(経営者交代タイプ)」という名称でしたが、事業承継・引継ぎ補助金では名称が変更されています。
③ M&A型 M&A型
補助率 | 2/3 |
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補助上限額 | 800万円 |
上乗せ額 | 200万円 |
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)により経営資源を引き継いだ事業者を支援する補助金です。
※事業承継補助金では「事業再編・事業統合支援型(M&Aタイプ)」という名称でしたが、こちらも変更されています。
補助費用
補助費用に関しては、事業承継により新たに取り組む事業や廃業に関する費用が補助されます。
新たに取り組む事業では、
- 市場開拓に支出するマーケティング費用や委託費
- 新たな商品開発のための設備投資や原材料費
など、幅広い費用が補助の対象になります。
人件費:補助対象事業に要する賃金
店舗等借入金:国内の店舗・事業所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料
設備費:国内の店舗・事業所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用
謝金:補助対象事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費
外注費・委託費:業務の一部を第3者に外注or委託するために支払われる経費
専門家活用
専門家活用は、事業再編・事業統合などにより経営資源を譲り渡す場合の費用の一部を補助する制度です。
買い手・売り手ともに対象になっており、士業などの専門家に事業再編などを依頼し、
- 仲介手数料
- デューデリジェンス費用
- 企業概要書作成費用等の費用
を支払った場合に補助の対象になります。
※売り手に対してのみ廃業の上乗せ部分があります。
事業スケジュール
補助事業期間は、交付決定日から最長で2021年12月31日(金)までとなります。
第1次公募期間 | 2021年7月12日(月)まで |
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交付決定日 | 2021年8月中旬頃 |
第2次公募期間 | 2021年7月中旬~2021年8月中旬頃の予定 |
事例
実際に補助金を活用した事例を紹介します!
下記事例を参考に、補助金の活用を検討してみませんか?
1. 専門家活用 × 買い手支援型(No.1)
卸売業・小売業A社(売上高:1億円未満)
業種 | 卸売業・小売業 |
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本社所在地 | 兵庫県 |
事業内容 | 医薬品・化粧品小売業 |
従業員数 | 10人未満 |
資本金 | 非開示 |
代表者の年齢 | 50代 |
背景
弊社は薬局の経営を行っている会社であり、昨今の新型コロナウイルスによる影響で一時よりは持ち直しているものの、当初の計画より売上2割減くらいの状況が続いている。
既存の薬局に関しては、新型コロナの影響が大きい耳鼻科クリニックに通院する患者をメインターゲットにしているが、引継予定である薬局は新型コロナの影響が少ない整形外科病院の患者さんがメインターゲットとなっている。
引継予定となる店舗
- 人口減の過疎地域に立地
- 後継者となる薬剤師がいない
- 廃業も視野に入れて別の会社で引き継いでくれる先を探していた
- 弊社と秘密保持契約を締結している仲介業者が情報を入手し、交渉を引き続き進めている
- 交渉中の店舗を引き継ぐことで、地域経済の活性化に貢献するのみならず、今まで店舗を利用していた患者さんが、遠くに足を運ばなくてはならないということを防ぐ点から今回の引継ぎは非常に大きな必要性を感じる。
対象会社の経営資源を引き継ぐことの目的
引き継ぎの形態 | 事業譲渡 |
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補助金の使途 | M&A譲渡案件紹介手数料 |
- 経営課題であった薬剤師の雇用や取引先との取引を維持することが可能
- 高い水準での売り上げの安定化を図れる
- 弊社も定期的に病院患者さんからの売上が見込める→既存の薬局の事業展開が可能に
- 従来は近隣のクリニックに通院している患者さんをターゲットにして、収益の安定化を図っていた→高い水準で収益の安定が見込める店舗を引き継ぐことで、既存の店舗は近隣のクリニックのみならず、介護施設やサービス付き高齢者向け住宅への在宅訪問の事業展開を行うことができる
- 外来よりも在宅訪問のほうがより高いお客様単価が見込めるため、利益の質の向上につながり、地域密着型の高水準のサービスを提供する薬局として拡大していく。
2. 専門家活用 × 売り手支援型(No.3)
サービス業C社(売上高:1億円未満)
業種 | サービス業 |
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本社所在地 | 宮城県 |
事業内容 | 自動車整備業 |
従業員数 | 10人未満 |
資本金 | 非開示 |
代表者の年齢 | 70代 |
引き継ぎの形態 | 株式譲渡 |
補助金の使途 | 契約書の作成 |
背景
- 一人息子は大手企業に就職し、会社を継がないことを明言
- 従業員にも取引先にも後継者がいない状態が続いていた
しかし、私は昨年大病を患らい、自分に万が一のことがあったときのことを考えるように。
顧問税理士に相談したところ、会社を廃業すると、工場の原状回復費用や従業員の退職金などで、残余財産はほとんど残らないだろうといわれてしまった。
このままでは、自分も財産を残せず、従業員も路頭に迷い、取引先にも迷惑をかけることになるため、顧問税理士に後を継いでくれる人や会社がないか探してもらうことにし、ようやく引き継いでくれる会社を見つけることができた。
引き継ぎにより達成したいこと
①従業員の雇用の維持
従業員には創業から働いてくれている人もおり、会社に愛着を持っている人も多いので、自分が経営者を辞めたとしても会社を存続させ、従業員に社会へ貢献する場所を用意したい。
②取引先との取引の継続
取引先は長年の付き合いのところが多く、信頼関係が構築されており、お互いの会社や業務、サービス、従業員などをよく知っている。
もし、私の会社が事業承継せずになくなれば、取引を従来通りに行うことが難しくなるだけでなく、新規先の会社と一から信頼関係を築かねばならず、取引先に大きな損失を与えることに。
③シナジー効果
事業承継予定の株式会社は、会社から車で10分と近く、エイミングセンターなどこちらが所有していない設備も所有していることから、仕事を外注させることを考えています。
ただ、対象会社はスタッフが若いので、自分が現場の技術指導やフロント業務の指導など対象会社へノウハウを提供できると考えており、高いシナジー効果が期待できます。
3. 経営革新 × 経営者交代型(No.9)
フラワーカドヤ(売上高:1億円未満)
生花・観葉植物のサブスクリプションサービス体制の構築による販路拡大事業
業種 | 花・植木小売業 |
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本社所在地 | 福井県 |
従業員数 | 10人未満 |
引き継ぎの取り組み
被継承者年齢 | 91歳 |
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継承者年齢 | 32歳 |
被継承者と継承者の関係 | 親子 |
引き継ぎの形態 | 同一法人 |
被継承者を見つけた方法 | 知人・親族 |
経営資源の引き継ぎの目的
お花はお家に飾るもの、季節を感じるものとして古くから愛されてきた。
近年、人々は様々な社会問題を抱え、日々のストレスや不安を抱きながら過ごしている。
そんな日々の不安を和らげ癒しを与えるお花の持つ力で、
フラワーカドヤは「花のある暮らしを」提案し皆様にやすらぎ・幸せを提供し続けていきたい。
↓しかし
昨年から蔓延している新型コロナウイルス感染症の影響で、店舗売上が激減しており、このままでは事業継続が困難になる可能性があった。
一方で、
自宅や贈答にお花を楽しみたいと考える方も一定数いる
↓
新たなイベントを考え、花卉(き)農家を巻き込んだ、生花の需要拡大のチャンスであるとも考えた。
こうした新たな取り組みを行うため、事業承継を行うことに。
実施事項
店舗内にサブスクリプションサービス用のスペースを整備
→本店の魅せる展示の一部としても役立て、販売促進につながるよう整えた。
来店型及び展示型の店舗として、人目を集めていきたい。
中心街に立地する店舗のショールーム化を図った
→弊社のブランド価値を高め、生花の需要拡大策の促進及びサブスクリプションサービスの強化とあわせた販路拡大を図っていく。
補助対象事業について
経費の使途 | 外注費 |
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現在のコロナ禍の外出自粛により消費者ニーズの高まっている、観葉植物を中心としたサブスクリプションサービスの強化により、新事業では定期的な売上の確保及び販路の拡大を図り、事業の収益体制の改善を図ることが可能に。
また、福井市内の中心街に立地する店舗のショールーム化も行い、花のある暮らしや楽しむ習慣づくりを地道に根付かせていくことにより、長期的な販売促進を図っていく。
4. 経営革新 × M&A型
AbHeri(売上高:1億円〜3億円)
「サイズレス」をコンセプトにした新ブランドによる新規顧客の開拓
業種 | ジュエリー製品卸売業 |
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本社所在地 | 東京都 |
従業員数 | 20人程度 |
譲渡先概要
業種 | ジュエリー製品卸売業 |
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本社所在地 | 関東地方 |
従業員数 | 40人程度 |
引き継ぎの取り組み
被継承者年齢 | 72歳 |
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継承者年齢 | 46歳 |
被継承者と継承者の関係 | 第三者 |
引き継ぎの形態 | 事業譲渡 |
被継承者を見つけた方法 | 外部専門家等からの紹介 |
経費の使途 | 外注費73%、人件費27% |
引き継ぎの目的と経緯
- 創業より34期を超え、ジュエリーのBtoBとBtoCにて業容を拡大してきた
- 創業者の年齢も70歳を超えた
- 事業承継を考えていたところ、コロナ禍により店舗のクローズ、売り上げ減少に襲われた
- 今後の資金調達も簡単ではなく、これ以上債務を増やすことなく、従業員と取引先を事業継続により守る事を目的として、急いで承継先を探したところ、コンサル会社を通して承継者を紹介された
- ジュエリーブランド「AbHeri(アベリ)」は約20年にわたるブランド運営の中でたくさんの顧客を抱えている
- メーカーとしての技術者と確かなノウハウを有している
- 販促やプロモーションについて弱みがある
↓引き継ぎすることにより
- 承継者の代表はITを活用したマーケティングや販促が強み
- IT関連会社との繋がりや人脈を擁している
→被承継の事業の弱みであったプロモーションについて、承継者が強みとするITを活用したマーケティングや販促を活用すればこの先の事業継続、成長も十分見込める。
また、これらの無形資産を後世に残すことは社会的にも意義があると考え事業承継するに至った。
引き継ぎにあたり実施したこと
販促やプロモーションについての拡充が喫緊の課題
↓解決策として
- 独自の新コンセプトブランド「ANYFIN」を立ち上げ
- 新たな販路拡大を模索した結果、オンラインショップの開設
- 新規ブランド認知のためのSNS広告にも注力し、売り上げ拡大を狙う
→経営革新等支援機関に対しても今後の展望を含め確認し、本補助金の申請に至った。
最後に
今回は、事業継承・持続化補助金について解説してきました。
会社を経営するには、頭を悩ませることがたくさんあるかと思います。
事業を継承することで、経営を救える場合があるかもしれません!
そんな時は、補助金を有効的に使えるといいでしょう!