不妊治療を経験した方のうち16%(男女計(女性当23%))が不妊治療と仕事を両立できず、離職しています。
社員にとって安心して働ける職場環境を整えることが必要になります。
今回は、不妊治療と仕事を両立させるための職場環境づくりとその補助金制度について紹介していきます。
ぜひ参考にしてください!
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
不妊治療と仕事の両立が必要な理由
出典:不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル
職場で不妊治療への支援が必要な理由はどんなものがあるでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
治療の負担が離職に影響
厚生労働省が2017年12月、男女2060人にインターネットを通じて実施した実態調査によると、不妊治療をしたことがあると265人の方が答えました。
そのうち、42人が「仕事と両立できず退職した」と回答。
仕事との両立が難しい状況が明らかになりました。
両立に困難を感じる理由には、
- 通院回数の多さ
- 精神面での負担が大きい
- 通院にかかる時間がよめない
などが挙げられました。
一般事業主行動計画に追加
2021年4月から、厚生労働省は事業主が一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」を追加しました。
従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。
不妊治療が2022年4月から保険適用に
2022年4月から、不妊治療のうち関係学会のガイドラインなどで有効性・安全性が確認された治療法が保険適用となりました。
これにより治療に取り組む人が増えることが考えられます。
両立支援等助成金 不妊治療支援コース
両立支援助成金 不妊治療支援コースとは・・・不妊治療のために利用可能な休暇制度・両立支援制度について、利用しやすい環境整備に取り組み、不妊治療を行う労働者に休暇制度・両立支援制度を利用させた中小企業事業主を支援する制度です。
出典:厚生労働省HP
助成内容
A,Bそれぞれが支給されます。
A:環境整備、休暇の取得
28.5万円〈36万円〉
支給要件の全てを満たし、最初の労働者が、不妊治療のための休暇制度・両立支援制度を
合計5日(回)利用した場合
B:長期休暇の加算
28.5万円〈36万円〉
上記Aを受給した事業主であって、労働者に不妊治療休暇制度を20日以上連続して取得させ、原職等に復帰させ3か月以上継続勤務させた場合
対象者
①〜⑥のいずれかを導入し、労働者に利用させた中小企業事業主
- 不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的ともに可)
- 所定労働制限制度
- 時差出勤制度
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制
- テレワーク
支給要件
次の全ての条件を満たすことが必要です。
- 不妊治療と仕事の両立のための社内ニーズ調査の実施
- 整備した上記①~⑥の制度について、労働協約又は就業規則への規定及び周知
- 不妊治療を行う労働者の相談に対応し、支援する「両立支援担当者」の選任
- 両立支援担当者」が不妊治療を行う労働者のために「不妊治療両立支援プラン」を策定
申請の流れ
申請の流れは以下の通りです。
社内ニーズ調査
↓
就業規則の改定・周知
↓
不妊治療両立支援プラン作成
↓
社員が休暇を取得。助成金を受け取り。
就業規則の改定が必要になります!
下記が規定の例になりますので、参考にしてください!
不妊治療休暇の規定例
第○条 労働者が不妊治療を受けている場合で、その勤務しないことが相当であると認められるときには、必要と認められる日数(時間数)について、有給による休暇を与える。
2 休暇取得の際の賃金の計算方法については、年次有給休暇と同様の方法により算定する。
3 休暇を取得する場合は、所定の手続により所属長に申請しなければならない。
不妊治療と仕事の両立に取り組んでいる企業例
不妊治療と仕事の両立に取り組んでいる企業について紹介します。
具体的にどんな取り組みを行なっているのか参考にしてください!
出典:不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル
株式会社バンダイ【玩具等製造業 従業員数 約800人】
制度や取り組みの導入理由・経緯
- 各社員にいろいろなライフステージやライフプランがある中で、多種多様な人材に、より働きやすい環境を作っていくことの一環として、支援制度を整備。
- 不妊治療を実際に行っている社員へのヒアリングも行い、人事部内の戦略チーム、労務チーム、報酬チーム等が連携して、4~6か月間程度でまとめました。
- トライアル期間中の利用者数を踏まえて周知を強化する必要があると考え、「ファミリーフレンドリープラン」として関連施策をまとめて周知することを強化。
主な制度や取り組み
■こうのとり休暇制度
1か月から最長で1年間の休暇(無給)を取得できる。入社3年目以降の男女と
も申請可能。上司を通じて専用窓口に申請書を提出し、不妊治療をしているというこ
とが分かる書類を添付する。
■ライフサポート休暇制度
不妊治療以外でも、病気の治療、子どもの看護等の理由で1日or半日単位で男女
とも年間30日(無給)まで利用可能。
■こうのとり支援金制度
不妊治療にかかる自治体等の公的な助成金と実際にかかった費用との差額につい
て、年に最大20万円を支給する。また、配偶者が社員でなくても、不妊治療を受けた
場合、支給対象としている。
■上司や同僚の理解を深めるための研修
新たに管理職となる社員に対して研修を実施し、ファミリーフレンドリープランにつ
いての説明を行い、制度の理解や社員から相談があったときの対応の留意点等につ
いて啓発している。
制度などの利用者や周囲の声
不妊治療を始めていない社員から、
- 「不妊治療に関する制度が設けられて安心した」
- 「制度利用の予定があるわけではないが詳しく聞かせてほしい」
といった声が人事部に届き、ニーズがあったことを再認識できた。
導入・運用のポイント
- 不妊治療休暇といった直接的な名称は避けた。
- 制度利用に際して明るいイメージを持ってもらうためにこうのとりのキャラクターを採用。
- 不妊治療を受ける社員はの葛藤に対して、これまでの会社に対する貢献を伝え、制度の利用を勧めた。
- ワークライフバランスの充実を図り、社員が幸せに、輝いて働いてもらいたい、仕事と生活をより充実してもらいたいということを制度の軸に置きました。
株式会社サイバーエージェント【サービス業 従業員数 約1,800人】
制度や取組の導入理由・経緯
- 2014年当時、女性社員比率は32%、産休・育休後の復帰率は96.3%と高く、今後さらにママ社員の増加を予想
- 経営陣に直接提案できる機会のある会議で、女性活躍支援に関する提案が複数出された。
- この会議をきっかけに、「macalon(マカロン)」という女性活躍支援パッケージを導入→不妊治療に関する制度もその中の一つとして運用。
- 制度周知に当たっては、全社メールで制度概要を伝えた。
- より詳細を伝えるため、上司向け / 女性社員向けに分けた説明会も実施(各回30分、2~3回程度実施)。
- 広報による社外リリースや、役員陣がブログ等で発信→制度の目的や会社の考えをより多くの社員に伝えることができた。
主な制度や取組
■妊活休暇
不妊治療中の女性社員が、治療のための通院等を目的に、月1回取得できる特別有
給休暇。急な通院や体調等に考慮し、当日申し出て取得が可能。
■エフ休
女性特有の体調不良の際に、月1回取得できる特別休暇。通常の有給休暇も含め、
女性社員が取得する休暇の呼び方を「エフ休(エフはFemaleのFを指す)」とすること
で利用用途が分からないようにし、取得理由の言いづらさ、取得しづらさを排除。
■妊活コンシェル(専門家への相談)
妊活に興味がある社員や、将来の妊娠に不安がある社員が、専門家に月1回30分の
個別カウンセリングで相談できる制度。男女とも利用でき、パートナーの同席も可能。
業務時間中に利用できる。
制度等の利用者や周囲の声
- 若い社員が多いが、制度があることにより、仕事をしながら妊娠・出産・子育て等に向き合うイメージが持てるように。
- 当社への入社を希望する学生等にも安心感を与えることができている。
導入・運用のポイント
- 不妊治療に関する制度運用のポイントとして、相談窓口を明確に。
- 閲覧者が分からないメーリングリスト等ではなく、「人事担当の○○宛て」と打ち出したことや、専門家に相談できる制度を導入。
- プライバシー配慮のため、妊活コンシェルの開催時間や場所にも工夫し、開催場所は告知メールに記載せず、申込みがあった人にのみ通知。開催時間帯は自然に離席しやすい、昼休みに近い12時~14時の間を基本に。
- 男性、女性、パパママ以外の社員も利用できる複数制度をパッケージ化したことで、妊活以外の期間もサポートできる制度を含み、長いスパンで社員の「挑戦」を応援しています。
最後に
不妊治療は心身ともに負担がかかる場合が多いです。
不妊治療と仕事を両立できるような取り組みを行うことで、社員にとって働きやすい職場環境を提供することができるでしょう。
両立できる制度を整えることで、補助金も貰えるので、
この機会に導入を検討してみませんか?