経営者が高齢になる中で、後継者不足や廃業が中小企業では問題となっています。
そのため、後継者探しや事業承継方法の模索など、安心して引き継ぐ準備が大事だと考えられています。
しかし、経営者の中には
・何をしたらよいのかわからない
・どのような承継方法があるのかわからない
・難しそうで、なんだか不安
など、様々な悩みや不安を抱えている方も多いと思います。
この記事では、中小企業の事業承継の現状や課題、承継方法や使える補助金について解説します。
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
事業承継における現状
中小企業の経営者の高齢化が進み、次の世代へと承継するタイミングに差し掛かっています。
しかし、国の調査では、60歳以上の経営者のうち約50%は廃業を考えており、
そのうち約3割が後継者不足、同じく3割が事業の将来性がみえないという理由です。
廃業予定であっても、業績が向上している企業や現状維持できる企業も多く
廃業すると日本のノウハウや技術が失われてしまいます。
また、事業承継が必要にもかかわらず、承継準備が進んでいる企業は半数以下であり
相談もしていないため、中小企業への支援が重要となっています。
事業承継における課題
なぜ事業承継が進まないのか、事業承継の課題について詳しく解説します。
後継者がいない
これまでは、子どもが跡をつぐのが当たり前でしたが、今は職業選択の自由が尊重され
後継者不在の企業が多くなっています。
もともと自分の代で終わらせようと考えていた経営者や納得のいく後継者に
出会えていない経営者も多く、事業継承が進んでいません。
後継者の育成には何年もかかる上に、相談窓口等で相談せず
後継者が見つからないまま、廃業している企業も多いです。
税負担がかかる
後継者に株や資産を渡す場合、多額の税金がかかってしまうことを心配し
事業承継に踏み切れない企業もあります。
中小企業は資金が豊富でないところも多く、会社を渡すのにお金がかかってしまっては
その後の経営にも影響が出てしまうことを恐れています。
税金の猶予や免除をしてもらえる制度もありますが、
経営者が自ら専門家に相談などをしなければ、アドバイスをもらえず
何も知らないまま時間が過ぎてしまいます。
個人保証を引き継がないといけない
企業が銀行からお金を融資してもらう場合、経営者が連帯保証人となる場合もあり
後継者に個人保証が引き継がれることが重荷になっています。
個人保証が引き継がれるとなると、後継者側もこの先何かあったらと
将来への不安から事業承継を拒否したくなる可能性があります。
そのため、後継者に引き継ぐ個人保証が減らせるように
調整することが経営者には必要です。
周囲からの理解が難しい
後継者が見つからず、M&Aにより買収等をされた場合
働いている社員は雇用や待遇など、自分の仕事や生活に不安が生まれます。
また、取引先にも不安を抱かせたり人脈が途切れてしまう可能性もあり
自社に関係する企業や人に対して充分な説明が必要です。
配慮が不足すると、様々なところから不満が生まれ、事業に影響が出たり
社員がやめてしまう場合もあります。
事業承継までの4ステップ
次に、どのような準備を進めていけば事業承継できるのか、解説します。
1.経営者が必要性を理解する
まずは、経営者が事業承継の必要性を認識することが大切です。
後継者を育てたり、見つけるには時間がかかる上に、引き継ぐ際も資金や
権利等だけでなく、取引先との関係性など人脈も引き継ぐ必要があります。
2.課題を探す
会社の経営状態や事業の将来性などを調べ
現状の課題を見つけ承継前に改善することが必要です。
資金繰りに問題がなければ、後継者も安心して会社を引き継げるだけでなく
経営に対するモチベーションも変わってきます。
また、会社の経営理念など、目に見えない資産も見える化しておくことで
企業のイメージを崩さずにすみ、その後の取引関係良好や企業の成長にも繋がるでしょう。
3.企業に変化を加える
課題を解決し、魅力的な企業へと変化すると、後継者にも引き継ぎたいという思いや
やる気が生まれます。
辞めてしまえば自分は関係ないと、会社の将来を放棄してしまっては
これまでのすばらしい実績にも傷がついてしまいます。
この先何が必要になるのか、今のままで良いのか、
事業や社内制度などブラッシュアップしていくと、企業の価値も向上するでしょう。
4.事業承継計画をつくる
企業や事業を後継者に引き継ぐ際に、長期的な経営方針や目標を決め
具体的な行動計画を作ることで、事業承継後もスムーズに仕事が進みます。
後継者とも相談しながら進めていけば、後継者も企業や事業のことを理解でき
将来について考えたり、あらかじめ相談もできます。
また、従業員や取引先、金融機関など関係者に具体的な内容を示すことで
トラブル回避や理解を促せるでしょう。
事業承継の方法
事業承継には、具体的にどのような方法があるのか解説します。
親族内承継
これまで当たり前に行われてきたのが、経営者の子どもや親戚に引き継ぐ親族内承継です。
子どもに経営の素質があるか不明でも、後継者が決まっているので時間をかけて
育てることができ、関係者にも納得・理解がされやすいです。
また、親族内承継の場合、相続税などの税金が多額にかかる場合もあるため、
節税対策をしておくことも経営のために大事でしょう。
親族外承継
子どもに会社を継ぐ意志がなかったり、長年の勤務で仕事や理念を理解している
社員がいる場合、役員や従業員が継ぐこともあります。
社員であれば候補を複数立てることもでき、会社で働いてきたからこそ
理念や事業への理解があり、共有しやすいでしょう。
また社員との信頼関係も築いているため、理解も得られやすいですが
本人に経営者になる意志がなかったり
債務保証が壁となり引き受けてもらえない場合もあります。
M&A
M&Aとは第3者の企業へ合併や買収により、事業を引き継いでもらう方法です。
後継者が見つからず廃業となると、社員も仕事を失いますが
別の企業が引き継いでくれれば、雇用を守れる上に相手から新しい営業力を確保できます。
しかし、経営理念が残らない場合や社員が新しい企業に馴染めないこともあり
配慮が必要であったり、悪い買い手に捕まる場合もあるため専門家への相談が必要です。
中小企業生産性革命推進事業(事業承継・引継ぎ補助金(六次締切))
この事業は、事業の伝承やM&Aによる販路開拓・設備投資・事業再構築などの
経営革新を実施する中小企業に対して、費用の一部を国が補助する制度です。
経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3つのコースがあります。
支援対象者
経営革新事業
事業承継、M&A(経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機として、経営革新等に挑戦する中小企業・小規模事業者
専門家活用事業
廃業・再チャレンジ事業
※個人事業主を含む
補助対象経費
・経営革新事業
設備投資費用、店舗・事業所の改修工事費用等
・専門家活用事業
M&A支援事業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用、セカンドオピニオン等
・廃業・再チャレンジ事業
廃業支援費、在庫廃業費、解体費等
補助上限・補助率
経営革新事業
補助上限:600万円 補助率:2/3または1/2
一定の賃上げを実施する場合は補助上限は800万円
専門家活用事業
補助上限:600万円 補助率:2/3または1/2
廃業・再チャレンジ事業
補助上限:150万円 補助率:2/3または1/2
申請締め切り
令和5年8月10日(木)(予定)
まとめ
事業承継は後継者の決定や事業の引き継ぎ、関係先への説明など
やらなければならないことが多く時間が必要です。
そのため、企業の未来を守り、後継者が安心して承継できるよう
時間とお金をかけた準備が経営者には求められています。
国も中小企業のスキルやノウハウを守るために、補助金制度を用意しているため
ぜひ活用し、事業承継を進めていきましょう。