- めんどうなマルチの剥ぎ取り
- 廃棄作業を大幅に省力化
- 環境問題にも貢献できる
今注目されている生分解性マルチをご存知ですか?
今回は、生分解性マルチ利用のメリットと活用例について紹介していきます。
また、生分解性マルチの利用に使える補助金情報もご紹介するので、
ぜひ参考にしてください!
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
生分解性マルチとは?
参考▶︎実のらす、農業のミライHP
生分解性マルチとは・・・「生分解性マルチフィルム」という被覆材で、天然素材または化学合成素材をシート状に加工したものです。
従来のマルチフィルムとは異なり、廃棄物とならずに自然界で分解される点が大きな特徴です。
作物の⽣育期には従来のポリエチレンマルチと同様に機能しますが、収穫間際になると⼟壌中の微⽣物によって分解を始め、収穫後に作物の残さと一緒にロータリーなどでほ場にすき込むと、最終的に水と二酸化炭素とに分解されます。
農家にとっては、剥ぎ取り・廃棄の労力が大幅に軽減され、また、廃プラスチックとしての処理コストがかからないことが大きなメリットとして挙げられます。
生分解性マルチ利用のメリット
省力面
通常のマルチでは、収穫後にはマルチを剥ぎ取り、作物残渣や異物、土などを取り除いてから折りたたむ作業が必要。
- 生分解性マルチでは収穫後の回収・調整作業は必要ない、
- マルチを踏みつけてもOK→トラック等を乗り入れて、収穫場所の近くで搬入作業ができる。
環境面
- 使用済みプラスチックの処理が必要ない。
- 近年、世界で注目されている「海洋プラスチック問題」の解決にも貢献。
経済面
通常のマルチは回収後、産業廃棄物として適正に処理をする必要があります。
産業廃棄物の処理には費用が必要になりますが、生分解性マルチでは処理コストがかかりません。
安全面
生分解性マルチは土壌の微生物により水と二酸化炭素に分解されるため、土壌に悪影響は生じません。
生分解性マルチの活用例
次に、実際の活用例を見ていきましょう。
参考▶︎生分解性マルチの活用例
大規模生産を支える生分解性マルチ
大嶋聡史氏(茨城県結城市)
1999年に就農
経営面積は約14ha
<主な栽培作物>
- 春ハクサイ:13ha
- 枝豆:4ha
- 秋レタス:13ha
- 秋冬ハクサイ:2ha
- トレビス:0.4ha
導入のきっかけ
安定した収穫量や品質を確保するためにマルチは欠かせない。
しかし、収穫後に作物残渣や土をふるい落としながらマルチを剥ぎ取り→広げて乾かす→折りたたんで業者に持って行くという作業が必要なため、手間のかかる重労働となっていた。
周辺には光崩壊性マルチを使用する農家もあったが、風の強い地域のためマルチに切れ端が他のほ場に飛散する様子を見ていたことからポリマルチを使用していた。
7年前に資材販売店から生分解性マルチを紹介され使用してみたところ、作業性やマルチ機能に問題なく使用できたことから、ポリマルチから生分解性マルチへの転換を進めてきた。
現在は
枝豆:10割
春白菜:約8割
秋レタス:約3割
秋冬白菜:約5割
で生分解性マルチを使用
マルチ導入のメリット
- 回収作業が不要になり省力化が図られた
- 処理の手間とコスト低減
- 契約栽培であるため安定的に定量を出荷が必要であり、計画的な作付けのためのリスク軽減となった
- 収穫物の搬出の際、作業車の乗り入れスペースの確保の必要がなくなり、スピーディな搬出を実現
ロータリーでのすき込みは2、3回実施しているが、分解が遅くなる寒い時期でも1ヶ月くらい経過すると畑面にマルチ片はほとんど見えなくなっている。そのため、次作の定植に支障も起きていない。
新規就農の規模拡大と特産品創出に貢献
松本創一氏(埼玉県東松山市)
2012年に就農
全ての作業を1人で
経営面積は約2ha
<主な栽培作物>
- トウモロコシ:80a
- 春ブロッコリー:30a
- 秋冬ブロッコリー:40a
- カリフラワー:40a
- キャベツ:40a
導入のきっかけ
就農時から栽培しているトウモロコシでは、ポリマルチのほか光崩壊生マルチを利用している。
光崩壊性マルチも土の中ではマルチはなくならないのかと問題を感じていた。
そんな中、農業資材の通販サイトのカタログで生分解性マルチを見つけ、トウモロコシなど一部で導入を始める。
次作の作付けの際には、すき込んだマルチ片はほとんどなくなっていたことで生分解性の効果を確認。
徐々に生分解性マルチの利用を増やしていった。
現在は、春に作付けするトウモロコシとブロッコリーは全て生分解性マルチを利用。
秋冬作でもブロッコリー、キャベツの一部で生分解性マルチを利用している。
農作業は1人で行うため、敷設作業も機械でないとこなせないが、特に問題なく貼ることができている。
導入のメリット
トウモロコシは地上部から出てくる根がマルチに絡まるためマルチを剥がすのは重労働。
その上、時間が経つとどんどん草が生え、ますます回収が難しくなるため、他のことを後回しにしてでもやらないといけないことが多々あった。
ポリマルチでは10aで半日から1日かかっていたマルチ剥ぎの作業が、
生分解性マルチではハンマーナイフで残渣を粉砕し、その後にすき込みを行なっているが、二つの作業を合わせても1時間かからない。
特に、7月〜8月の暑い時期の重労働からの解放は、肉体的にも精神的にもメリットは大きい。
全ての作業を1人で行なっているため、現在の経営面積を維持するためには生分解性マルチの利用は欠かせなくなっている。
次作の準備のための耕起を含めると、3回程度はロータリーをかけているので、次作の作付けの先にはマルチはほとんど見えなくなっている。
生分解性マルチ導入促進事業
グリーンな栽培体系の転換に向けたバイオマス由来を含む生分解性マルチの生産現場への導入の全国展開を加速化するため、国産バイオマス等を原料とした生分解性マルチの実用化に向けた検討とともに、製造・流通の課題解決、生分解性マルチの導入促進に向けた以下の取組を実施しています。
対象事業内容
(1)国産原料による生分解性マルチ実用化検討
ア. プラットフォームの構築
生分解性マルチについて、国内で再生産可能なバイオマス由来原料の利用を促進するため、マルチ製造メーカーと素材開発メーカー等によるプラットフォームを構築します。
イ. 国産原料による生分解性マルチの実用化に向けた検討
主に輸入に依存している生分解性樹脂の価格高騰等のリスクに対応するため、新たに輸入原料に頼らない国産バイオマスを原料とした生分解性樹脂等の物質特性を収集整理し、国産バイオマスを原料とした生分解性マルチの実用化に向けた検討等を実施。
(2)生分解性マルチの製造及び流通における課題解決対策の検証
生分解性マルチは、分解性を持つ資材特性から長期保管が難しいため、生産現場での生分解性マルチ使用時期を踏まえた受注生産による供給が行われています。
こうした供給体制に起因する製造リスクや原料及び製品の損失リスクに対応し、生分解性マルチの低コスト化に向けた対策を試行し、その効果について検証等を実施。
(3)生分解性マルチの導入促進
生分解性マルチの生産現場導入の全国展開を加速化するため、生分解性マルチ導入による省力化・温室効果ガス削減効果や生分解性マルチ適応栽培体系の情報発信を実施。
(4)委員会等の設置・運営
(1)~(3)の実施に当たっては、有識者、農業団体、行政機関、業界団体等の意見を踏まえた検討及び取りまとめを行うための委員会等を設置して運営を実施。
補助対象経費
補助対象となる経費は下記の通りです。
- 旅費
- 謝金
- 人件費
- 賃金等
- 備品費
- 役務費
- 雑役務費
- 委託費
- 会場借料
- 通信・運搬費
- 印刷製本費
- 資材購入費
- 資料購入費
- 消耗品費
補助金額
補助金額:最大2,000万円
助成率:定額
最後に
今回は、生分解性マルチ利用のメリットと活用例・補助金情報について解説してきました。
環境にも優しく、経済的にもやさしい生分解性マルチ。
さらに、労働コストも軽減されます!
この機会にぜひ導入を検討してみませんか?