海外展開する前に!外国特許申請はした?
海外展開をしようとしている企業さまへ
海外進出や海外展開をする企業が年々増加するとともに、自社ブランドの模倣品や技術の流出なども問題視されてきています。
自社開発した、自社ブランドとその技術を守ることが大事であり、
もし守れなかった場合、販路縮小や売上減少、自社のイメージダウンなどの被害を受けます。
そのためにも特許取得が必要です。
海外進出を考えている企業さまは、国際特許の必要性や仕組み、支援対象などをチェックしておくとよいでしょう。
やるべきことの1つとして、外国特許申請が必要なのはご存知でしょうか?
実は、その外国出願にかかる費用の半額を助成する支援があります。
この記事の内容
- 外国進出で特許を取る理由(必要性)
- 国選びのポイント6選
- よく出願特許する国の例と特徴
- 費用相場
- 特許侵害の実例
- 助成金の概要
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外国進出で特許を取る理由(必要性)
日本で特許権を取得すれば、日本にある被疑製品(特許権の権利範囲に入る製品)を排除できます。
しかし、外国で製造・販売している被疑製品に対して日本特許は無力です。
すなわち、特許権は取得した国でのみ有効ということになります。
被疑製品が日本に輸入されれば日本特許で迎撃できますが、被疑製品が日本に入ってくるとは限りません。
そのため、外国でしか製造・販売していない被疑製品を排除するためには、日本だけでなく外国でも特許権を取得する必要があります。
国選びのポイント 6選
どの国に出願すべきか?
万全の対策を取るならば、なるべくたくさんの国に外国出願するべきです。
しかし、外国出願の対象国が増えると手間も費用も増えるため、現実的には対象国を厳選する必要があります。
(1)【費用】特許権の取得維持にどれくらいかかる国か
所得水準の高い国は総じて特許関連コストが高くなります。
1つ目に、海外代理人の報酬や為替も影響します。
2つ目に、翻訳費用の問題もあります。
例えば、アメリカに既に特許出願していれば、英語OKのヨーロッパやインドでは追加の翻訳費用はかかりません。
一方、中国に特許出願するときには別途中国語翻訳の費用がかかります。
重要特許の場合、特許権の便益(ベネフィット)に比べれば特許取得コストなど微々たるものですが、
特許出願時には将来的にその特許権がどれくらい重要になるか見通しにくいという実情もあります。
(2)【審査】特許取得し易い国か、特許審査が厳しい国か
国によって、技術分野によって、時代によって、特許権の取得のしやすさは変化します。
複数の国に特許出願したとき、(審査が厳しいとされる)A国で早々に拒絶査定をもらうと、他の国の特許審査にもネガティブな印象を与えてしまうのではないか、と懸念するクライアントもいます。
逆に、A国で特許査定をもらうことができれば、他の国の特許審査にもポジティブな印象を与えることができる、という考え方もあります。
審査官は他国の審査に影響されることはない、と言いますので実際のところはどうなのかわかりません。
(3)【市場】特許製品(または被疑製品)がたくさん売れそうな国か
特許製品や被疑製品が売れそうな国であれば、特許侵害が発生する可能性が高まります。
例えば、特許製品が高付加価値製品の場合、そのような付加価値に高いお金を払ってくれるような豊かな国でないと市場性はありません。
また、いくら裕福な国であっても、特許製品に興味を示さない国にも市場性はありません。
たとえば、アメリカでパチンコは流行っていないので、パチンコの発明についてアメリカに特許出願する必要は低いでしょう(市場開拓するつもりなら別)。
(4)【生産性】被疑製品の生産拠点になりそうな国か
被疑製品の生産拠点になりそうな国に特許出願しておけば、特許侵害の発生源を直接叩けます。
グローバル化により生産拠点が移動しやすい時代になったため、生産性<市場性等、と重視すべきかもしれません。
(5)【開発力】被疑製品を開発する能力をもってる国か
被疑製品を開発する能力や意志があるかも検討ポイントになります。
自社と競合関係にある外国企業は、自社製品と同じような製品を開発してくる可能性があります。
技術開発を制約するために競合する外国企業の開発拠点国に特許出願します。
(6)【知財重視度】特許権(財産権)を尊重する国か
多くの国は特許制度をもっていますが、特許権をどれだけ尊重するかは国によってさまざまです。
特許侵害訴訟で特許権者が勝てない国では、侵害者は特許権を怖がりませんので特許権の効果も薄くなります。
尊重する(特許が効果的な)国に申請費用をかけるべきです。
補足
外国で特許を取得するためには、たくさんの専門家がきっちりと連係プレーをする必要があります。
外国特許の価値は、対象国だけでなく、発明の内容、特許明細書(原文)の品質、翻訳の品質、現地代理人(外国弁理士)のスキルと誠実さ、など多数の要因によって決まります。
特に、現地代理人とのコミュニケーションは大切であり、対応に疑問をもったら思い切って現地代理人をチェンジするという判断も時には必要です。
よく出願特許する国の例と特徴
よく外国出願の対象候補となる国について簡単にお伝えします。
(1)アメリカ
外国出願の対象国として真っ先に候補になりやすい国です。
裕福な国なので購買力が高いです。特許制度も充実しています。
実は、世界の特許訴訟の大多数はアメリカで行われているともいわれます。
(2)中国
市場が大きい、生産拠点になりやすい、というイメージがあります。
社会主義国なので特許制度の歴史は浅いのですが、ここ数年でかなり整備されています。
中国は知財を重視しつつあるため、中国人の特許権者に日本企業が現地で訴えられるケースも増えてくるのではないかとも言われています。
そういうケースを想定すると、反撃用の中国特許をもっておいた方がいいのかもしれません。
外国人の特許権(私権)をどれだけ本気で守ってくれるのかは未知数なところもあるとはいえ、特許権者が侵害訴訟で勝利する傾向が強まりつつあるようです。
(3)韓国
日本と産業構造が似ているため、日本企業と競合する韓国企業は多いです。
韓国で競合製品が開発される可能性が高い場合には、韓国企業を牽制するために韓国特許を取得しておくという考え方もあります。
(4)台湾
エレクトロニクス製品※1の生産拠点になることが多いです。
特許権者が特許侵害訴訟で勝ちにくいとも言われますが、案件ごとの事情があるので決めつけない方がよいです。
中国語と台湾語は漢字が違うので、中国出願と台湾出願をするときには同一特許明細書では対応できません。
※1画面に文字や画像を表示したり、文書や音声を記憶するといったことを可能にしているのが、中に組み込まれた半導体や小さな電子部品。 これらの部品や、内蔵しているプログラム、ネットワークを総称して「エレクトロニクス」と呼びます。
例)
・衝突回避として行われ自動的にブレーキを作動してくれる自動車
・ICカードをかざせば残高を表示してくれる駅の改札
・ボタンを押せばお弁当を温められる電子レンジ など
(5)インド
将来の市場として期待されています。
特許制度は発展途上であり、インド出願はマイナーですが、特許審査のスピードは非常に遅いです。
(6)ヨーロッパ
ヨーロッパは、欧州特許庁(EPO)に対して特許出願します。
市場の大きさは魅力的です。
ソフトウェアやアミューズメント、ビジネスモデルなど、見えないもの、発明の効果を計測しにくいものなどは特許になりにくく、技術に対して総じて保守的な印象があります。
特許関連コストも高い方です。
費用相場(内訳)
弁理士や特許事務所に頼んで特許申請する場合、トータルで60万円ほどのお金が必要です。
出願費用
先ほど紹介したように、出願時にかかる費用です。
- 特許庁へ支払う費用…14,000円
- 特許事務所に支払う費用(平均)…300,237円
審査請求費用
特許権を取得するために必要な、審査請求の手続きをする際は2種類の費用を支払います。
- 特許庁へ支払う費用…138,000円+(請求項の数×4,000円)
- 特許事務所に支払う手数料目安…10,000~15,000円
早期審査依頼
出願審査請求手続をしてから結果が通知されるまで、平均で10.2ヶ月かかります。しかし早期審査という制度を使えば、この期間を3ヶ月以下に短縮できるのです。
早期審査自体は、追加料金なしで受けられます。
早期審査を希望する手続きを、特許事務所に代行してもらう場合は、1~5万円ほどの料金が発生します。
中間処理費用
出願した特許が審査に通らず拒絶されて、かつ拒絶理由を覆すときにのみ、中間処理費用が発生します。
ちなみに中間処理だけ弁理士に依頼する、という中途受任もOKです。
特許侵害の実例(海外進出した斬新な腕時計)
日本の中堅時計メーカーのK社
売上規模はそれほど大きくはありませんでしたが、
独特のムーブメント(動力機構部分)の腕時計を作ることで
一部に熱狂的なファンをもつことで知られていました。
人口減による日本市場の縮小傾向に懸念を抱いていたのもあり
「市場規模が巨大な中国は、売上を一気に拡大する大きなチャンスであることは確かだ。マレーシアは若者人口も多く、これも大きな魅力であることは間違いない」
と考え、現地生産による海外進出を決断しました。
現地での腕時計の生産が軌道に載乗ると、どんどん売上が拡大していきました。
しかし、香港の路上の雑貨店で、K社の腕時計にウリ二つの時計が売られているとの報告を受けました。
そして、自社の特許を侵害している可能性が高かったため、すぐになじみの特許事務所の弁理士に法手続きの相談をしましが、弁護士の答えは以下で勝訴とならずでした。
- 日本で取得した特許権の効力は、残念ながら日本国内に限られるので、日本国内で製造されたものには特許権の効力が及びますが、海外での製造・販売行為については無効力なこと
- 海外での製造・販売については、その国で特許出願し、特許権を取得する必要があること
外国出願費用の助成の概要
対象者
申請にあたっては、以下のすべての条件に該当していることが必要です。
- 日本国内に主たる事業所を有する中小企業者、またはそれらの中小企業者で構成されるグループであること。
※中小企業者には法人格を有しない個人事業者を含む。また、地域団体商標に係る外国特許庁への商標出願については、事業共同組合等、商工会、商工会議所、NPO法人を含む。 - 外国特許庁への出願業務を依頼する国内弁理士等(選任代理人)の協力が得られる中小企業者、又は、自ら同業務を現地代理人に直接依頼する場合には、同等の書類を提出できる中小企業者。
- 本事業実施後のフォローアップ調査および、査定状況報告書に協力する中小企業者。
- 暴力団関係企業、違法な行為又は不正な行為を行った中小企業者、その他ジェトロが不適当と判断する中小企業者でないこと。
助成率
助成対象経費の2分の1以内(千円未満の端数は切り捨て)
上限額
1中小企業者あたり300万円以内
(ジェトロと地域実施機関にて採択した助成金合計)1申請案件あたり:
- 特許 150万円
- 実用新案、意匠、商標 60万円
- 冒認対策商標(※)30万円
(※)冒認対策商標登録出願とは、第三者による抜け駆け(先取り)出願(冒認出願)の対策を目的とした商標登録出願。
申請期間
- 第2回 2023年7月3日(月曜)~ 7月14日(金曜)17時00分
- 第3回 2023年9月4日(月曜)~ 9月15日(金曜)17時00分
※補助上限額の範囲内で、複数回に応募することは可能です。
※各日程とも応募受付期間の最終日17時00分までに郵送または持ち込みにて必着のこと
申請方法
- 郵送による申請
- jGrantsと郵送の併用による申請
まとめ
せっかく長い年月と費用をかけて生み出した自社製品を模倣されないためにも
海外進出を考える際には、ぜひ同時に
海外特許申請も行いましょう。
そうすることで、自社の商品、技術、ブランド力や信頼などを
守ることに繋がります!
せっかく申請するなら助成金を受け取りたいですよね!
申請したいけど、申請の仕方がわからない…
書類の書き方が不安…
自分が該当しているのか自信がない…
少しでも不安がある方は、ぜひご相談ください!
最後までお読みいただきありがとうございました!