「優秀な人材を確保したいけど、人件費に余裕がない」と悩まれている事業主は多いのではないでしょうか。
その際に、活用できるのが、キャリアアップ助成金です。
派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用労働者を正社員にすることで助成金が受けられる制度です。
従業員1人当たり最大で72万円の助成金を受け取ることが可能です。
今回は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)について解説していきます!
補助金のお話は細かいし、難しくてわかりづらい用語も多いですよね!
そこで私が簡単な補足などをいれていきますね。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。
支給額
有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合に助成されます。
< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額を示しています!
- 有期 → 正規:1人当たり 57万円<72万円>(42万7,500円<54万円>)
- 無期 → 正規:1人当たり28万5,000円<36万円>(21万3,750円<27万円>)
※①、②を合わせて、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで
加算措置
< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額を示しています!
派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合
1人当たり | 28万5,000円<36万円>(大企業も同額) |
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対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合
(転換等した日において母子家庭の母等または父子家庭の父である必要があります)
有期→正規 | 1人当たり:95,000円<12万円> |
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無期→正規 | 1人当たり:47,500円<60,000円>(大企業も同額) |
人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正規雇用労働者へ転換等した場合
有期→正規 | 1人当たり:95,000円<12万円> |
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無期→正規 | 1人当たり:47,500円<60,000円>(大企業も同額) |
「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換等した場合
事業所当たり | 95,000円<12万円> |
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大企業の場合 | 71,250円<90,000円> |
※1事業所当たり1回のみ
対象となる労働者
次の①から⑨までのすべてに該当する労働者が対象です。
- 有期雇用労働者または無期雇用労働者 (次のアからオまでのいずれかに該当する労働者)
ア 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者
イ 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される無期雇用労働者
ウ 6か月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者
エ 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)によるものに限る。)を受講し、修了した有期雇用労働者等
オ 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職業(職業安定法第15条の規定に基づき職業安定局長が作成する職業分類表の小分類の職業をいう。)に就くことを希望する者であって、紹介予定派遣(当該派遣期間中に派遣元事業主が実施するOFF-JTを8時間以上実施しているものであること。)により2か月以上6か月未満の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者(以下「特定紹介予定派遣労働者」という) - 正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。
- 当該転換日または直接雇用日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則に規定する親会社、子会社、関連会社および関係会社等をいう。以下同じ。)において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと。
- 転換または直接雇用を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。
- 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること。
- 支給申請日において、転換または直接雇用後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。
- 支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。
- 転換または直接雇用後の雇用形態に定年制が適用される場合、転換または直接雇用日から定年までの期間が1年以上である者であること。
- 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。
簡単にまとめると、
- 支給対象となる事業主に通算して6ヶ月以上雇用されている有期契約労働者
- 支給対象となる事業主に6ヶ月以上雇用されている無期雇用労働者
- 6ヶ月以上継続して同一の業務に従事している派遣労働者
- 支給対象となる事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、それを修了した有期契約労働者等
- 令和2年1月24日以降に新型コロナウイルス感染症の影響により離職し、就労経験がない職業に就くことを希望している者で、紹介予定派遣により2ヶ月以上6ヶ月未満の間継続して同一の業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者(令和4年3月31日までの暫定措置)
①~⑤のいずれかにあてはまり、下記に該当しない労働者が対象です。
- 正規雇用労働者になることを約束されて雇われた有期雇用労働者の場合
- 有期雇用労働者から正規雇用労働者に転換する場合で、転換日の前日から過去3年以内に同一事業所で正規雇用労働者として雇用されたことがある場合
- 無期雇用労働者から正規雇用労働者に転換する場合で、転換日の前日から過去3年以内に同一事業所で正規雇用労働者または無期雇用労働者として雇用されたことがある場合
他にも細かな条件があるので、申請する前には必ず確認しましょう!
変更点
正社員の定義
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用される労働者
就業規則に正社員の定義が記載されており、その定義の通りの正社員が対象となる
↓改定後の定義(令和4年10月1日以降)
ただの正社員登用制度は対象とならず、
同一事業所内の正社員に適用される就業規則が適用される労働者
「賞与」または「退職金」の制度+「昇給」が適用されているものに限る。
非正規雇用労働者の定義
6カ月以上雇用している有期または無期雇用労働者
↓
賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6カ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
正社員と全く同じ給与・計算方法で運用している場合は対象外。
今後の注意点
✔正社員に転換予定の従業員は「賞与」または「退職金」+「昇給」の制度がないと対象外
『業績によって賞与は支給しない場合もある』でもOK。制度を就業規則に入れることが必須です。
✔10月1日以降の正社員転換予定の従業員、正社員と全く同じ賃金額や賃金計算方法で支給していると対象外となります。
× 契約社員:月給 正社員:月給
〇 契約社員:時給 正社員:月給
〇 契約社員:月給 正社員:月給+諸手当
対象となる事業主
助成金の申請の対象になる事業主については細かな規定があります。
主なものは以下になります。詳しくはこちらをご確認下さい。
- 雇用保険に加入している
- キャリアアップ管理者を配置し、キャリアアップ計画書を作成して労働局の認定を受けること
- キャリアアップ計画書で指定してある期間内に正社員などに転換すること
- 正社員への転換制度を就業規則等に規定していること
- 対象になる労働者を転換した後に6ヶ月以上継続して雇用し、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させること
- 労働法令等を遵守していること
注意すべきポイント
申請期間に注意
正社員コースの申請期間は、転換後6ヶ月分の賃金を支給した翌日から2ヶ月以内と定められています。この期間を過ぎると申請できませんので注意が必要です。
賃金締切日が月末で翌月25日払いの企業の場合
転換日1月1日で時間外手当支給日2月25日~7月25日の場合であれば、申請は7月26日~9月25日の間に行う必要があります。
賃金の3%以上の増額が必要
申請するためには、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金と比較して3%以上増額している必要があります。
この際、時間外労働手当(固定残業代含む)など毎月変動するものや、通勤手当など実費補填であるものは対象外になります!
2021年度から賞与についても含まれなくなったため注意が必要です。
また、家族手当など固定的な給与も就業規則に記載されていないと含めることができないので注意しましょう。
転換前後で増額になるような賃金設計には、「賃金上昇要件確認ツール」を利用すると便利です。
生産性の上乗せ給付を申請する場合は生産性要件に注意
キャリアアップ助成金には生産性要件という項目があります。
この要件を満たすと助成金が割り増しになります。
以下のどちらかを満たす必要があります!
生産性要件
A. その3年度前に比べて6%以上伸びていること
B. その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること
生産性の求め方は次の算式により計算します。
生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
※人件費には役員分は含まれません。雇用保険被保険者数には休暇中の社員も含めます。
照会先となる金融期間は自由に指定ができます!事前に取引先の金融機関に最新の財務状況を共有して話を通しておくことをお勧めします!
最後に
キャリアアップ助成金(正社員化コース)について解説してきました!
令和4年10月1日から、労働者の定義が厳しくなったりと条件が変更になりますので、
前もって準備をしておくことをお勧めいたします!
ぜひ参考にして下さい!
せっかく申請するなら、補助金・助成金を受け取りたいですよね!
しかし、申請には要件の確認や事業計画の策定、必要書類を揃えたりと
面倒なことや手間がかかることも多く、不安を感じる方も多いと思います。
そんなときは、諦める前にご相談下さい!
最後までお読みいただきありがとうございました!