新型コロナウイルスの流行や不安定な世界情勢の影響などにより原油価格が高騰しています。
原油価格が高騰した影響で、石油製品をはじめ、海外から輸入する木材や食料などの
価格も値上がりし、企業の営業利益の減少や一般家庭の家計を圧迫するなど
さまざまな影響がでています。
こうした背景から、国は業況が厳しい中小企業を支援することを目的とした
事業再構築補助金「緊急対策枠」を設けました。
今回は物価高騰の現状や企業に与える影響を解説し、
事業再構築補助金と実際に採択された企業の事例をご紹介します。
原油価格・物価高騰の現状
2022年以降、あらゆる商品やサービスの価格が値上がりしています。
特に燃料・エネルギーの価格が、前年と比べて約20%の値上げとなっています。
燃料・エネルギーの価格の上昇は企業の製造コストや輸送コストに
ダイレクトに影響するため、あらゆる商品やサービスの値上がりにつながっているといえるでしょう。
原油価格・物価高騰の原因
①燃料・資源価格の高騰
主に原油などの燃料・資源価格が高騰した原因の1つは
新型コロナウイルスの感染減少です。
コロナ禍によって停滞していた世界中の経済活動が再び動き出しました。
それにより世界中でエネルギーの需要が増え、価格が高騰したのです。
さらにロシアのウクライナ侵攻により、原油や天然ガスの主要輸出国であるロシアから
輸入しづらくなったことも燃料・資源価格の高騰に拍車をかけています。
②円安による輸入コストの増加
もうひとつの原因が円安の影響です。
1~2年前までは1ドル110円前後で安定していましたが、
現在では1ドル130円~140円ほどで推移しています。
円安になると輸入コストが増加します。
日本は輸入依存度がとても高く、輸入コスト増加分がそのまま商品価格の値上がりに
反映されてしまいます。
燃料・資源の高騰や円安は今後も続くと予想されています。
物価高騰が企業に与える影響
物価が高騰することによって、企業には次のような影響があると考えられます。
①仕入れ価格の高騰
②原材料価格の高騰
③運送コストの増加
①仕入れ価格の高騰
販売業のような仕入れた商品を消費者へ販売する業種では、
仕入れる商品が値上がりすることで利益が圧迫される、もしくは
増加した仕入れ価格分を値上げして商品を販売しなければ業績が苦しくなります。
仕入れコストによって利益が圧迫されるような企業は、人件費などの諸経費削減
販売価格の値上げといった方法をとらなければ利益が上がらなくなってしまいます。
②原材料価格の高騰
仕入れ価格と同様、原材料価格の高騰も企業へ大きな影響を与えます。
製造業などの原材料を仕入れて加工し、できあがった製品を販売する企業も
原材料価格の高騰は製造コストの増加となり利益が圧迫される、
または販売価格の値上げを余儀なくされます。
さらに火力発電で使用する石油や天然ガスなどの価格が高騰することで電気料金が上がるなど
インフラにも影響がでてきます。
③運送コストの増加
原油の高騰によりガソリン代も値上がりし、車や船などによる運送コストも増加します。
日本の主な物流手段はトラックなどの自動車による輸送が大半ですが
輸入依存度が高いため、海外から船によって輸入される商品も多いです。
その増えたコストは運ばれてくる商品価格に反映され、企業の仕入れ価格などに影響を与えます。
事業再構築補助金【緊急対策枠】
新型コロナウイルスや物価高騰の影響により売上や利益が減少したことで、
事業の再編や新たな分野開拓へ向けて行動している
または行動しようと意欲のある経営者様必見の事業再構築補助金の緊急対策枠をご紹介します!
申請要件
①物価高騰などの経済環境の変化によって2022年1月以降の連続する6カ月のうち任意の3カ月の合計売上高が、2019年~2021年の同じ3カ月の合計売上高より10%以上減少していること。またコロナによって影響を受けていること
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定して、一体となって事業再構築に取り組むこと
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3%以上増加、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3%以上増加する見込みのある事業計画を策定すること
補助金額・補助率
従業員の人数によって補助金額が変わります。
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
5人以下 | 100万円~1000万円 | 中小企業:3/4 ※
中堅企業:2/3 ※ |
6人~20人 | 100万円~2000万円 | |
21人~50人 | 100万円~3000万円 | |
51人以上 | 100万円~4000万円 |
※下記の金額を超える部分は中小企業では2/3、中堅企業では1/2となります
従業員数 | 金額 |
5人以下 | 500万円 |
6人~20人 | 1000万円 |
21人~50人 | 1500万円 |
公募締め切り日
令和5年3月24日(金)18:00まで(厳守)
補助金の採択事例
事業再構築補助金のホームページでは実際に採択された企業の
事業計画が公表されています。
ここでは緊急対策枠で採択される可能性が高い事例を紹介していきます。
事業計画名 | 食・イベント分野のDX推進により総合プロデュース企業へ転換 |
事業計画概要 | 既存事業の食とイベント分野をIT・IoT導入により高生産性事業に再構築し、次世代型イベントのデファクトスタンダードをつくる。 |
事業計画名 | 地域資源を活用した総菜製造のためのセントラルキッチン新設と食品製造卸売への事業転換 |
事業計画概要 | 新たに調理加工設備を新設して地元素材を使用した冷凍調理食品の製造から卸販売及び通信販売を行う。 |
事業計画名 | BBQ業態転換「商品個包装パッケージ化に伴う受発注および在庫管理システムのIT化事業」 |
事業計画概要 | 従来のセントラルキッチンで製造した料理を「ケータリング」で店舗へ運ぶビジネスモデルから、全て小分した個包装で製造した「物販商品」への新たなビジネスモデルへの転換を行う。 |
事業計画名 | ニーズが拡大しているサンプルをチラシ等に貼り付ける加工への進出 |
事業計画概要 | コロナ禍や原油価格・物価高騰による断裁・折り加工の受注減打開のため、長年培ってきた印刷物加工の知見を活かしニーズが拡大している化粧品等のサンプルをチラシ等に貼り付ける「サンプル貼り」へ進出し、断裁・折り加工と相乗効果を出し成長を図る。 |
こちらの記事もおすすめです↓↓
まとめ
物価高騰により多くの企業が影響を受けています。
原材料や運送コストが値上がりすることで利益が圧迫され、商品価格に増加したコストを
転嫁できなければどんどん業績は悪化してしまいます。
人件費などの諸経費削減にも限界はありますし、商品の値上げも競合他社の価格設定を
気にしながら検討する必要があります。
今のまま事業を継続するのではなく
「新たな分野の開拓や事業再編などを行って、新しいサービスや商品を提供し売上をV字回復させよう」
このような意欲・考えがある場合は、ぜひ事業再構築補助金の活用を検討してみましょう。