「介護離職をすると、どのような問題に直面する?」
「介護離職を回避するための対策や予防法はあるのか?」
このような疑問をお持ちの方はたくさんいらっしゃっるかと思います。
介護と仕事の両立は非常に困難です。
そのため、介護離職を余儀なくされてしまう人は少なくありません。
介護離職者を減らすためには、問題や原因について知り、効果的な対策を進めることが欠かせません。
今回は、介護離職現状や介護離職の対策に活用できる補助金制度について紹介していきます!
ぜひ参考にしてください!
- 介護離職の現状と課題
- 企業のできる介護離職防止対策
- 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
- Q&A
- Q1_父・母の2人を介護。介護のための短時間勤務を父と母分の介護あわせて20日間利用した場合、対象となりますか?
- Q2_一度休業取得時・職場復帰時の助成金の支給対象となった労働者が新たに要介護状態となる親族が生じたために介護休業を取得する場合、同一労働者について再度支給対象となりますか?
- Q3_対象労働者の配偶者が同一の事業主に雇用されており、配偶者も同じ対象家族の介護のために同介護休暇制度を利用した結果、それぞれ10時間以上の利用を満たした。それぞれで申請可能ですか?
- Q4_家族が急に要介護状態となったため、出勤して面談する時間がなく介護休業を取得したが、助成金の対象となりますか?
- Q5_法律を上回る範囲の介護休業等についても助成金の対象となりますか?
- 最後に
介護離職の現状と課題
介護離職とは・・・家族が要介護状態になり、介護に専念するために本業の仕事を辞めてしまうことを指します。
介護は育児や病気などと同様に、仕事の継続を妨げる主な要因であるため、要注意と言えるでしょう。
介護離職は、主に中高年で増加しています。
要介護者が在宅介護を望んでいたり、金銭的な問題で在宅介護を選んだ場合、一般的に配偶者や子が介護にあたることになります。
なお、配偶者は高齢であることが多く、老老介護になりがちです。
上記のグラフからも分かるように、10年間で介護離職者は約2倍に増えました。
グラフ上で見ると、「介護・看護」が離職理由に占める割合は小さいです。
しかし、介護や看護のために離職する介護離職は2017年には約9万人。
2010年代になっておよそ2倍に増えています。
介護と仕事の両立ができているのは6割弱
就業構造基本調査結果によると、介護をしている人は日本におよそ628万人います。
その内、6割弱の約346万人が仕事と介護を両立しており、多くの人が介護に大きな負担を感じているのが実態です。
そもそも介護は身体的にも精神的にも負担が大きいので、仕事と両立するのは容易ではありません。
「介護がいつまで続くのか分からず将来が不安」
「介護制度等が分かりにくく使いづらい」
「介護による疲労が溜まるがなかなか休めない」などが理由で、
「介護転職者」・「介護離職者」・「就業継続者」のいずれの立場でも8割以上が
「介護に負担を感じている」と回答しています。
「介護に専念するために仕事を辞めたほうがいいのではないか?」と思い込んで離職を選択してしまう方が多くいます。
介護離職後に抱える後悔
介護中は親の年金などで何とか生活できたとしても、
仮に看取りとなった場合、離職によって無職となった自分だけが残されてしまいます。
離職を後悔して求職を始めても、長年離職していた40~50代での再就職は考えているよりも難しいです。
求職活動自体を諦めてしまう人も少なくなく、
再就職できたとしても、離職前よりも収入が減少するケースがほとんどです。
実際、介護離職後に正社員として再就職できた人は半数にも満たず、4人に1人は無職の状態にあります。
その結果、貯蓄も収入も無くなって生活が困窮し、孤独な生活を送るケースが出てきてしまいます。
介護離職を「良かった」と思う人は少ない
実際に介護のために離職した人の負担の変化について見てみましょう。
介護離職は、本来であれば身体的・精神的な介護負担を減らすことを目的としていたはずです。
しかし、実際のところ・・・
- 「精神面」が64.9%
- 「肉体面」が56.6%
- 「経済面」が74.9%の人が、離職後に負担が増したと回答しています。
つまり、介護離職をした後も多くのケースで負担が増しているので、介護離職をして「良かった」と考えている人は非常に少ないのが現状です。
具体例には、仕事を辞めて収入が減ったことで利用する介護サービスを絞る必要が出てしまい、心身ともに負担が重くなってしまうケースが考えられます。
また、実際には仕事をすることで気分転換になっていたのに、介護に専念することでストレスのはけ口が無くなってしまったケースも考えられます。
このように、介護離職後は以前よりも苦しくなることも考えられる点に留意しましょう。
介護離職者が増えることのデメリット
介護離職が増加すれば、企業にとって人材流出となるだけでなく、労働力不足の問題を一層深刻化させ、経済の減速につながることも懸念されます。
経済産業省によると、介護離職に伴う経済全体の付加価値損失は1年当たり約6,500億円と見込まれます。(経済産業省 第1回産業構造審議会 2050経済社会構造部会(2018年9月21日))
企業のできる介護離職防止対策
高齢化社会が進んで、ますます労働人口が減っていくであろう将来を考えると、企業としても介護離職により働き手を失うデメリットは大きいです。
企業内で介護制度を周知する
せっかく介護休業の制度を設けていても、労働者に周知しなければ意味がありません。
実際に、介護休業や短時間勤務・残業免除の制度を知らないまま介護との両立をして苦しんでいる会社員も少なくありません。
そのため、企業内においても介護休業制度について周知し、もし家族に要介護者がいても仕事と両立することができる旨を知ってもらうことが重要です!
また、実際に取得した社員がいれば事例としても紹介しやすくなります。
メンタルヘルスケアに気を配る
介護に関する悩みは大きく、精神的に疲弊してしまう人も少なくありません。
そのため、少しでも気分を楽にするために、
- メンタルヘルスのカウンセラーを雇う
- 介護離職防止コースを申請する
ことも有意義でしょう!
社内外問わず、気軽に相談できる環境を整備することで、社員の精神的負担を軽減できるはずです。
リモートワークの活用
リモートワークを活用することで通勤の必要性が無くなるので、日中のスケジュールを柔軟に組みやすくなります。
通勤の負担を軽減できるメリットはもちろん、リモートワークにより介護と仕事の両立を助けることができます。
新型コロナウイルスが流行した影響もあり、それをきっかけに導入した企業は多くあります。
自身の仕事がリモートワーク可能かどうかを確認し、会社に相談してみるのも良いでしょう。
勤務制度の見直し
介護離職を防ぐために、勤務制度を見直す動きも活発です。
なお、育児・介護休業法では介護のために、
- 「短時間勤務制度」
- 「フレックスタイム制度」
- 「時差出勤制度」
- 「労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度」
のいずれかを設ける必要があると定められています。
近年は、以上の中から複数の制度を設けたり、介護する人でも働きやすい制度を整備する企業も増えつつあります。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等のみなさまへの助成金です。
介護離職防止支援コースは「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主、または介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、利用者が生じた中小企業事業主に支給されます。
参考▶︎厚生労働省HP|両立支援助成金
支援内容
支援内容は下記のとおりです。
①介護休業:
対象労働者が介護休業を合計5日以上取得し、復帰した場合
②介護両立支援制度:
介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、合計20日以上利用した場合
- 介護のための在宅勤務
- 法を上回る介護休暇
- 介護フレックスタイム制
- 介護サービス費用補助等
③新型コロナウイルス感染症対応特例:
新型コロナウイルス感染症への対応として家族を介護するために特別休暇を取得した場合
助成金額
①介護休業 休業取得時/職場復帰時
28.5万円<36万円>
②介護両立支援制度
28.5万円<36万円>
③新型コロナウイルス感染症対応特例
労働者1人当たり:
5日以上10日未満 | 20万円 |
---|---|
10日以上 | 35万円 |
※生産性要件を満たした事業主は< >の額を支給されます。
Q&A
最後に、両立支援等助成金におけるQ&Aをご紹介します!
Q1_父・母の2人を介護。介護のための短時間勤務を父と母分の介護あわせて20日間利用した場合、対象となりますか?
「同一の対象家族につき合計20日間以上利用があったこと」としているため、父・母での合算はできず、対象家族1人につき、要件の日数を満たす必要があります。
Q2_一度休業取得時・職場復帰時の助成金の支給対象となった労働者が新たに要介護状態となる親族が生じたために介護休業を取得する場合、同一労働者について再度支給対象となりますか?
新たに要介護状態となる家族が生じる等、別の事情が生じた場合には、
新たな介護支援プランを作成した場合、支給対象となり得ます。
Q3_対象労働者の配偶者が同一の事業主に雇用されており、配偶者も同じ対象家族の介護のために同介護休暇制度を利用した結果、それぞれ10時間以上の利用を満たした。それぞれで申請可能ですか?
対象労働者と同一事業主に雇用されている対象労働者の配偶者または親族がそれぞれ10時間以上介護休暇制度を利用した場合、それぞれについて申請できるが、その場合、対象労働者の配偶者についても介護支援プランの作成が必要となります。
Q4_家族が急に要介護状態となったため、出勤して面談する時間がなく介護休業を取得したが、助成金の対象となりますか?
介護支援プラン作成のための面談については、対象労働者の介護の状況によって対面による面談が困難な場合、電話、メール等による相談、調整を行い、その内容を記録していれば助成金の対象となります。
ただし、面談や電話、メール等による相談、調整を全く実施せずに介護休業が終了
した場合は対象とはなりません。
Q5_法律を上回る範囲の介護休業等についても助成金の対象となりますか?
労働協約または就業規則に規定されており、規定に沿った休業等の利用が確認できれば、法を上回る介護休業等も対象となります。
最後に
今回は、介護離職の現状とその対策についてご紹介いたしました!
介護離職が増加すれば、企業にとって人材流出となるだけでなく、
労働力不足の問題を一層深刻化させ、経済の減速につながることも懸念されます。
企業でできる対策を実施してみましょう!
ぜひ参考にしてください!